臨床工学技士の未来レポートコンテスト、金賞受賞

日本臨床工学技士連盟の「臨床工学技士の未来レポートコンテスト」で金賞をいただきました!

2021年は私たち臨床工学技士を含めた医療職種にとって大きな転換点なのかもしれません。
医師の長時間労働が問題となり始め、医師の働き方改革が行われることになりました。

医師の業務負担軽減のため、臨床工学技士をはじめ様々な医療職種にタスクシフト/シェアリングが行われることとなり、私たち臨床工学技士にとっては業務の幅が広がることになります。

このタスクシフト/シェアリングにおける臨床工学技士の未来についてのレポートを日本臨床工学技士連盟が募集していたので、フリーランスとして活動している私の思いとともに書いてみました。

少し長いですが、読んでいただけるとうれしいです。
PDFはこちらから

題名:タスクシフト/シェアを経て、臨床工学技士のあるべき姿を考える
氏名:大石 杏衣
所属:Kiwi(フリーランス臨床工学技士)

臨床工学技士が誕生して 33 年。臨床工学技士法制定の時、私たち臨床工学技士は何を期
待され、どういう役割を課せられたのか?今回のタスクシフト/シェアで再考させられた。
臨床工学技士は名称独占であるため、臨床工学技士しか行えない業務はない。専門的な知
識と技術、長年の経験が必要となる人工心肺操作でさえ、法律的には誰が行っても良い。そ
の反面、私たちは名称独占を生かしながら、病院の規模や方針により、医療機器が使われる
様々な分野、診療科での業務を広げて来た。それぞれの分野の深い部分まで業務として参入
したからこそ、高い専門性を持つ人材が育ち、他の医療スタッフと強い信頼関係が築け、チ
ーム医療の一員として期待に答え続けてきた。
一方で、今回のタスクシフト/シェアでは、臨床工学技士として一枚岩になれない部分が
露呈したと感じている。一部の技士は今回の業務拡大で恩恵を受けるものの、その業務に関
わる機会が少ない技士はどこか他人事のように感じているのではないか。今だからこそ、臨
床工学技士の根幹を見つめ直し、足並みを揃える時だと思う。これからの未来を考えた時、
臨床工学技士としてどうあるべきか?外部に仕事を広めることも重要であるが、主軸を再
確認することも重要だ。
そう考えた時、私は「医療機器管理業務」こそ臨床工学技士の主軸であると考える。現在
の医療、そしてこれからの医療は医療機器が中心と言っても過言ではない。今後、地域包括
がさらに進み、在宅等の病院外で医療機器が使用されるようになった時、一体誰がそれらを
管理し、安全に運用できるよう指南するのだろうか?それは私たち臨床工学技士であると
思う。医療安全、感染管理と共に、患者安全、病院運営、病院経営にとって、教育を含めた
医療機器の管理・運用は最重要項目である。それにも関わらず、診療報酬を含めた位置付け
は低いと感じている。
そしてまた、医療機器管理業務を行う上で、臨床工学技士に求められるスキルは、単なる
点検屋さんではなく、医療機器全体如いては医療機器を取り巻く病院全体のマネジメント
スキルではないかと思う。そう考えると、大病院や透析病院だけが私たちの活躍の場ではな
い。中小規模病院、クリニック、介護施設、在宅診療など、医療機器が使われるありとあら
ゆる場所が私たちの活躍の場となる。
臨床工学技士の7割が関わる透析業務では、今後患者の減少が予想される。その時に本当
に我々は行き場を失い、供給過多になるのか?その不安だけが先行し、思考停止になり、自
分たちの真の業務を見失ってはいないか。クリニックや歯科領域を含めた医療機関は 17 万
施設以上。そこに在宅が加わる。臨床工学技士の国家資格取得者は約 5 万人。病院で働く臨
床工学技士は約 24,000 人。医療機器の安全を担保するためには到底足りない。そこに医療

機器管理ができる臨床工学技士の「質」の問題も追い討ちをかける。今後 10 年ほどで臨床
工学技士を作り上げてきたベテラン技士が次々と退職を迎える。医療機器管理業務の真髄
とも言える部分を継承できている技士はどのくらいいるのだろうか?CE ではなく ME の部
分を私たち若い世代が継承することも急務である。
臨床工学技士の業務は決して「縁の下の力持ち」ではない。医療機器がある限り、私たち
の業務はなくならない。むしろ、AI や遠隔診療、今までにない新たな技術から生まれる医
療機器に対応する必要もある。医師の働き方改革は重要だ。タスクシフト/シェアで私たち
の業務範囲を確定させることも重要だ。しかし、視野が狭くなってはならない。自分たちの
根幹を見失ってはいけない。臨床工学技士として今こそ一つになる時だ。

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