AEDの使い方・Q&A

あなたの大切な家族が、お友達が、お子様が倒れた時、自信を持ってAEDを使えますか?

前回はASUKAモデルを紹介しました。尊い命を失ってしまったことで、私たちの身近な所にAEDが普及し、病院以外の場所で一般市民にも使用を認められるようになったという複雑で悲しい現実もあります。
AEDの使い方は非常にシンプルですが、自分の目の前で突然倒れた方に使用しなければならないため、医療従事者であっても、実際に使う時は慌てたり、頭が真っ白になったり、怖いと感じたりするかもしれません。
しかし、勇気をもってAEDを使用することで、救われる命、そして社会復帰ができるようになる可能性は格段と大きくなります。
今回はもしもの時に落ち着いてAEDを使用できるように、使い方や、どのようにして不整脈の治療を行うのか?使用する時の注意点や疑問点についてまとめていきましょう。

目次【本記事の内容】

1、AEDは何をする機器なの?

2、AEDを使うタイミングは?

3、AEDの使い方

4、AED使用を急ぐ理由(救急車を待っていてはダメですか?)

5、AED使用時Q&A

   5-1AEDの電極パッドは貼り直しや再使用ができますか?

   5-2、ショックボタンを間違えて押したらどうなるの?

   5-3、ショックボタンを押した時に患者に触れていたら、どうなるの?

   5-4、濡れた床の上に患者さんが寝ている時に電気ショックを実施してもいいの?

   5-5、マンホールの上に寝ている時は大丈夫?

   5-6、ショックボタンを間違えて押したらどうなるの?

6、子どもにも使用できますか?

7、まとめ

1、AEDは何をする機器なの?

AEDは心室細動と呼ばれる致死性の不整脈を治療する唯一の方法です。心室細動とは、心臓がけいれんしている状態のことで、医療現場ではVFと呼ばれています。
私たちの心臓は通常リズムよく弛緩と収縮を繰り返しており、全身に血液を送り出すポンプの役割りをしています。
しかし、心室細動(心臓のけいれん)が起きると、心臓はポンプの役割りを果たせず、全身に血液を送り出すことができなくなってしまいます。この状態が続くと、やがて、心臓が止まってしまいます。
AEDは心室細動を起こしている心臓に、大きな電気ショックを与えることで、心臓のけいれんを止める医療機器です。

 

2、AEDを使うタイミングは?

反応がなく、呼吸がない人にはAEDを使用します。
倒れている人を発見した時は、まず、呼びかけて反応の確認をします。反応がない時は、大きな声で応援を呼びましょう。手伝ってくれる人がいたら、119番(救急車)通報AEDを持ってきてもらいましょう。
次に呼吸を確認します。呼吸がない時や通常の呼吸と違う時(死戦期呼吸)や呼吸をしているかわからない時は、「呼吸なし」と判断し、胸骨圧迫を開始しましょう。
AEDが到着したら、躊躇せずにAEDを使用します。

3、AEDの使い方

AEDには様々な機種がありますが、使い方はほぼ同じです。
1、電源を入れる(フタを開ける)
2、パッドを貼る
3、自動で心電図を解析してくれる(解析中は体から離れる)
4、機器の指示に応じてショックボタンを押す(ショックボタンを押す時は体から離れる)

AEDのガイダンスに従い、上記の4つのステップで使用します。ひとつづつ確認しましょう。

1、電源を入れる
カバーを開けたら、まず電源を入れます。(カバーを開けるだけで電源が入る機種もあります。)
電源が入ると、ガイダンスが始まります。後の操作はガイダンスに従って行いましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

2、パッドを貼る
右の鎖骨の下と左のわきばらに貼ります。
・パッドに書いてある絵と同じ位置で、皮膚に直接パッドを貼ります。
・パッドは粘着力が強く、両方のパッドを一度に剥がすと貼りにくいので、一枚づつ貼りましょう。
・パッドが皮膚にしっかり密着するように貼るのがポイントです。
・パッドを貼ったら掛物や洋服をかけても大丈夫です。
・パッドから出ているケーブルをAED本体に接続します。
 (初めからケーブルが接続してある機種もあります。)

 

3、自動で心電図を解析してくれる(患者から離れる)
「心電図を解析します。離れてください」というガイダンスが流れたら胸骨圧迫等を中止し、患者の体から離れましょう。

・心電図の解析中に体に触れていたり、胸骨圧迫を続けているとノイズなどを解析してしまい、間違った判断をしてしまいます。

 

 

⇒ショックが必要な時(心室細動)はAEDが自動で充電を開始します。
ガイダンスに従い、ショックボタンを押します。(4番に進む)

⇒ショックが必要ない時は胸骨圧迫を続けましょう。
もし、意識が戻るなどの反応があれば胸骨圧迫を中止して様子を観察します。その場合もAEDはつけたまま、電源を入れたままにしておいてください。

4、機器の指示に応じてショックボタンを押す(ショックボタンを押す時は体から離れる)
ショックが必要な場合は「ショックが必要です。
充電中です。体から離れてください。ショックボタンを押してください」とガイダンスが流れます。

・充電中やショックボタンを押す時は、患者に触れないようにしましょう。
・全員が離れたことを確認したら、ショックボタンを押します。
・ショックボタンを押した後はすぐに胸骨圧迫を開始します。

 

 

 

 

 

 

その後も、AEDは2分毎に心電図の解析を繰り返します。
反応がない時は胸骨圧迫と人工呼吸を続けながら、救急車の到着を待ちましょう。

4、AED使用を急ぐ理由

救急車が来るまでAEDを使用せず待っていてはダメなの?

心臓が止まってから時間が経つほど命を助けるのが難しくなります。通常、心臓が止まって15秒以内に意識がなくなります。そして、3~4分以上心臓が止まったままの状態が続くと、脳は回復困難となります。そのまま何も処置をしないと、10分後には命が助かる確率は10%以下にまで低下します

もし、近くに居合わせた人が救命処置を行ったら、救命の確率は20%まで上昇します。消防庁の「平成27年版 消防白書」によると、救急車が現場に到着するまでの所要時間は全国平均で8.6分かかるそうです。救急車が到着するまでに、そばにいる私たちが心肺蘇生やAEDを使用し、いち早く救命処置を行うことが、大切な命を救うために重要となってきます。

 

5、AED使用時のQ&A

5-1、AEDの電極パッドは貼り直しや再使用ができますか?

電極パッドは1回限りの使い捨てです。また、一度貼ったものを貼り直すと、粘着力が低下し、ショック時のやけどなどにつながるので、貼り直しはしないようにしましょう。

 

5-2、ショックボタンを間違えて押したらどうなるの?

充電されていない時にショックボタンを押しても、電流は流れません。

5-3、ショックボタンを押した時に患者に触れていたら、どうなるの?

電気ショックを実施する時に患者に触れていると感電ややけどをする可能性があります。また、心電図の解析中に触れていると、間違った判断をしてしまうかもしれません。「離れて下さい」とガイダンスが流れたら、自分を含め、周囲の人も患者に触れないよう、お互いに声を掛け合いましょう。

5-4、濡れた床の上に患者さんが寝ている時に電気ショックを実施してもいいの?

濡れた床の上でもAEDは使用できます。ただし、電極パッドを貼る部分の水分(多量の汗など)は拭き取ってから使用しましょう。

5-5、マンホールの上に寝ている時は大丈夫?

大丈夫です。

5-6、貼り薬が貼られている時はどうしますか?

貼り薬の上に電極パッドを貼ると、電気がうまく伝わらなかったり、貼り薬が燃えてやけどを起こしたりします。貼り薬を剥がし、残った薬を拭いてから電極パッドを貼りましょう。

5-7、ペースメーカーを使用している人にも使用できますか?

使用できます。ただし、ペースメーカー本体のふくらみ部分を避けて電極パッドを貼りましょう。

5-8、金属のアクセサリーなどは、外したほうがいいですか?

電極パッドが金属アクセサリー(ネックレスなど)に直接触れない時は無理に外す必要はありません。電極パッドからできるだけ金属を遠ざけて使用しましょう。

5-9、女性のブラジャーは外した方がいいの?

外す必要はありません。ただし、皮膚に直接電極パッドを貼るようにしましょう。プライバシーの問題もあるため、女性に貼ってもらったり、周囲に見えないよう人垣を作るなどの配慮も必要かもしれませんね。電極パッドを貼った後は掛物や洋服を着せても大丈夫です。

6、子どもにもAEDを使用してもいいの?

子どもや乳児も成人と同じようにAEDを使用できます。手順も成人と同じです。

小学生以上への使用
小学生以上には成人と同じ電極パッドを使用します。

未就学児(約6歳まで)への使用
未就学時は小児用電極パッドを使用します。もしも小児用電極パッドがない場合は、成人用を使用します。電極パッドを貼る位置は大人と同じですが、電極パッド同士が接触しないように貼ることが重要になります。

乳児への使用
小児用電極パッドがある場合は小児用を使用しましょう。また、成人用モードと小児用モードの切替えがある時は小児用モードで使用します。
もし小児用がない場合は入っている電極パッドを使用しましょう。
小児は体が小さいため、胸と背中に電極パッドを貼るようにします。

 

 

 

 

 

7、まとめ

AEDが到着したら、できる限り早急に使用することが大切です。あまりにも時間がかかり、AED使用が遅くなってしまうと、助かる命が助からなくなる可能性もあります。疑問や心配もあると思いますが、ポイントをしっかりと押さえて、勇気をもって使用してもらえたらと思います。